2025.04.09
企業の人事担当者にとって、従業員の休憩時間を適切に管理することは、重要な業務の1つです。特に 6時間15分といった微妙な勤務時間の場合、どのように休憩を付与するのが正しいのか、判断に迷うこともあるのではないでしょうか。この記事では、労働基準法の基本ルールを踏まえた上で、勤務時間別の休憩時間の計算方法や、休憩時間を付与する際の注意点について詳しく解説します。法令を遵守し、効率的な勤怠管理を実現するために、ぜひ参考にしてください。
労働基準法第34条では、企業が遵守すべき休憩時間の基本ルールが定められています。この規定は、長時間労働による疲労の蓄積を防ぎ、従業員の健康を守ることを目的としており、規模や業種を問わず、すべての企業に適用されます。
また、労働基準法第119条では、違反した場合の罰則も定められています。詳しく見ていきましょう。
労働基準法第34条第1項では、労働時間に対する休憩時間について、以下のように明確に定められています。
この基準は、正社員やパートタイマーなどの雇用形態を問わず適用されます。また、これはあくまでも最低限の基準であり、業務の性質や負担度合いによっては、法定基準を超える休憩時間を設けることが望ましいこともあるでしょう。
労働基準法第34条第2項および第3項では、休憩時間を付与する際の3つの原則が定められています。
これら3つの原則を正しく理解し、適切に休憩時間を管理することが求められます。ただし、業種や業務内容によっては例外が認められる場合もあります。
①一斉付与の例外
労使協定を締結することで、一斉付与の適用を除外することが可能です。また、以下の特定業種では、労使協定がなくても一斉付与の適用が除外されます。
運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業
②自由利用の例外
警察官、消防吏員、養護施設等で児童と起居をともにする職員には、自由利用の原則が適用されません。また、その他の業種でも、休憩時間が労働時間の途中に付与されるものである以上、職場秩序を維持する目的で一定の制限をかけることが可能 です。
③途中付与の例外
途中付与の原則には例外はありません。
労働基準法第119条では、第34条に定められた休憩時間の規定に違反した場合の罰則が明記されています。違反すると、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」 が科される可能性があります。
また、労働基準監督署から是正勧告を受けるだけでなく、悪質なケースでは企業名が公表され、企業イメージの低下につながる恐れがあります。 さらに、従業員の労働意欲の低下や健康被害を招き、離職率の上昇につながるだけでなく、過労を理由に訴訟を起こされるリスクも考えられます。
休憩時間を付与する際は、労働基準法の規定を守るだけでなく、従業員の働きやすさを考慮することも重要です。企業によっては業務の特性上、まとめて休憩を取るのが難しい場合や、規定以上の休憩を設けることで生産性向上を図りたいケースもあります。ここでは、休憩時間の柔軟な運用方法として「分割付与」と「規定以上の休憩時間の設定」について解説します。
休憩時間は、一度にまとめて与えなくても問題ありません。例えば、45分の休憩を15分と30分に分けたり、60分の休憩を30分ずつに分けたりすることが可能です。実際に、業務の効率化や生産性向上を目的として、以下のように朝と昼の2回に分けて所定の休憩時間を設定している企業も多く見られます。
このように、休憩を適切に分割することで、従業員は定期的にリフレッシュでき、集中力を持続しやすくなるでしょう。
ただし、あまりに細かく休憩時間を分割するのは避けましょう。上述の通り、休憩時間には「自由利用の原則」がありますが、極端に短い休憩では、休憩時間の自由利用が事実上制限されるため、従業員が労働から完全に解放されているとは評価されない可能性があります。
特に、昼食を含む休憩時間は30分以上確保することが望ましいでしょう。適切な休憩時間の設定により、従業員の働きやすさと生産性の向上につながります。
労働基準法で定められている休憩時間は最低限の基準であり、これを上回る休憩時間を設定することも可能です。従業員の健康管理や生産性向上の観点から、法定より長い休憩時間を設けている企業も少なくありません。
特に、精神的な負担が大きい業務や高い集中力を求められる作業に従事する従業員にとって、適度な休憩時間の確保は重要です。 また、業務が深夜時間帯に及ぶ場合、残業による負担を考慮し、追加の休憩時間を設けることが望ましいでしょう。
企業独自の福利厚生として、休憩時間を長く設定することで、従業員の満足度向上や生産性向上につながるケースもあります。
では、勤務時間別の休憩時間について、具体的な計算方法を見ていきましょう。6時間15分や5時間勤務などの微妙な勤務時間では、どのように計算すべきか迷うこともあるかもしれません。また、残業が発生した場合の休憩時間の扱いも重要です。ここでは、具体的なケースを挙げながら、適切な休憩時間の計算方法を解説します。
6時間15分勤務の場合、勤務時間の合計が6時間を超えているため、45分以上の休憩を与える必要があります。 労働基準法では、6時間を1分でも超えた場合は45分の休憩が必要となるため、15分の超過であっても休憩時間は変わりません。
この場合、以下のような休憩時間の設定が考えられます。
業務の性質や従業員の希望を考慮し、最適な休憩時間の配分を検討することが重要です。
5時間勤務の場合は、勤務時間の合計が6時間以内であるため、労働基準法上、休憩時間の付与義務はありません。ただし、従業員の健康管理や業務効率向上の観点から、適度に休憩時間を設けることは推奨されます。
例えば、業務の途中に10分から15分程度の休憩を設けることで、従業員の集中力維持や疲労回復を図れるでしょう。従業員の負担を考慮し、適宜休憩を取らせることも検討すると良いでしょう。
7時間勤務の場合、勤務時間の合計が6時間を超え8時間以内であるため、定時内の休憩は45分で問題ありません。しかし、2時間の残業をすると合計9時間勤務となり8時間を超えるため、60分以上の休憩が必要になります。
法律上は以下のように休憩を付与すれば問題ありません。
この例では、17:45の時点で勤務時間が8時間に達するため、そのタイミングで15分の休憩を取得させています。なお、実務的な対応としては、以下のいずれかの方法がおすすめです。
この対応を取ることで、休憩時間の取得漏れを防ぎ、管理をよりシンプルにできます。
休憩時間の付与は、企業の実情に応じて柔軟に運用できますが、法的な観点を踏まえて注意するべきポイントもあります。ここでは、パート・アルバイトの休憩時間の付与、従業員が休憩を取得せず早く帰りたいと申し出た場合の対応方法について解説します。
労働基準法における休憩時間の規定は、雇用形態に関わらず適用されます。 パートタイマーやアルバイトにも、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は60分以上の休憩を与える必要があります。 休憩時間を短縮したり、省略したりすることは認められません。
同様に、休憩時間の3原則や違反時の罰則も、すべての従業員に適用されます。
上述の通り、休憩時間には「途中付与の原則」があり、始業前や終業後に休憩を取得することは労働基準法上認められていません。 たとえ従業員本人が「休憩を取らずに早く退勤したい」と申し出た場合でも、これを認めることは違法となり、責任を負うのは企業側です。
また、本人が問題ないと感じていても、休憩を取らずに勤務を続けると、疲労が蓄積し、業務効率の低下や健康被害のリスクを高める可能性もあります。「途中付与の原則」は、従業員の健康と安全を守るために設けられた重要な規定です。企業は法に従って、適切な休憩時間を確保しなければなりません。
この記事では、休憩時間の計算方法について、法的観点を踏まえながら具体的に解説しました。 休憩時間の適切な管理は、法令遵守だけでなく、従業員の健康管理や生産性向上にも直結する重要な課題です。 6時間15分といった微妙な勤務時間でも、法定基準を確実に満たすよう注意しなければなりません。
しかし、休憩時間の計算を手作業で行うのは煩雑で、ミスが発生する可能性もあります。 JOEの勤怠管理システムを導入すれば、こうした複雑な休憩時間の計算や管理を自動化し、人事担当者の負担を大幅に軽減できます。また、法改正にも迅速に対応し、常に最新の法令に準拠した運用が可能です。
企業の働き方改革を強力に支援するJOEの勤怠管理システムを、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか。詳細は「勤怠管理システム」のページをご確認ください。