2024.08.16
勤務時間と休憩時間を適切に把握し、管理することは、企業にとってコンプライアンスを遵守する上で、非常に重要な責務です。この記事では、労働基準法に基づく勤務時間と休憩時間の定義や守るべきルール、計算方法、注意点などを網羅的に解説します。正確な勤怠管理を実現し、働きやすい職場環境を作るためのポイントを押さえましょう。
勤務時間(労働時間)と休憩時間は、労働基準法や厚生労働省が策定するガイドラインにおいて、定義が明確に示されています。まずは、法令で定められるそれぞれの定義について確認しましょう。
労働基準法における勤務時間(労働時間)とは、始業から終業までの時間のうち、休憩時間を除いた実働時間を指します。また、厚生労働省が策定する『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』によると、勤務時間とは「労働者が使用者の指揮命令の下で労働する時間」と定義されています。
具体的には、業務の準備や片付けの時間、指示待ちの時間も勤務時間に含まれます。また、参加が必須の朝礼や研修など、拒否権がないものは原則として勤務時間です。一方で、タバコ休憩やお茶休憩、私用外出、自己意思で参加する研修については、勤務時間に含める必要はありません。
労働基準法における休憩時間とは、「労働者が労働から完全に解放される時間」と定義されています。休憩時間は、従業員が自由に利用できるものでなければなりません。
例えば、昼休みにオフィスで昼食を食べながら電話当番をしている場合、電話が鳴るとすぐに出なければならない状態にあります。これは労働から完全に解放されているとは言えないため、本来は休憩時間に該当しません。休憩時間には、従業員が心身のリフレッシュをしっかりと図れるよう、企業が環境を確保することが必須です。
勤務時間(労働時間)と休憩時間には、労働基準法に基づくいくつかの守るべきルールが存在しています。「36協定のことも考慮した勤務時間の上限」「1分単位での労働時間の把握」「休憩時間の3原則」など、労働に関するルールの徹底を行いましょう。
労働基準法第32条では、勤務時間(労働時間)の限度を1日8時間、1週間40時間までと定めています。この時間を超えて働くと法令違反となりますが、「36協定」(さぶろくきょうてい)と呼ばれる協定を企業と従業員で結ぶことで、業務の必要性がある場合には法定労働時間を超えての勤務が可能です。多くの企業では、期初などのタイミングに合わせて、1年に1回、36協定を締結しています。
ただし、36協定を結んだ場合でも、無制限に残業を命じることはできません。働き方改革関連法案に伴い、2019年4月より残業時間の上限規制が導入されました。残業(時間外労働)は、原則として月45時間未満、年360時間未満としなければなりません。例外として、36協定の特別条項を締結すれば、年6回までは上限を超えたさらなる残業が可能となります。
労働基準法では、勤務時間の正確な把握が義務づけられています。具体的には、厚生労働省の『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』に従い、従業員の勤務日ごとの始業時刻と終業時刻を1分単位で記録することが必要です。
勤務時間の正確な把握は、企業が従業員の健康を守り、適正な賃金を支払うための基本的な義務です。勤怠管理システムなどを活用して、勤務時間と休憩時間の正確な記録を徹底し、労務トラブルを防止することが企業には求められています。
労働時間の把握の義務について詳しくは、「労働時間は1分単位での記録が原則? 労働時間把握の義務とは」の記事も参考にしてください。
労働基準法第34条には、休憩時間に関する3原則が定められています。
企業が休憩時間の3原則を遵守することで、従業員の健康を保ち、健全な労働環境を維持できるでしょう。
労働基準法第34条では、勤務時間と休憩時間の適切な関係について、「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を与えなければならない」と定められています。ここでは、具体例を挙げて解説します。
労働基準法によると、勤務時間が6時間以内の場合、従業員に休憩時間を与える義務はありません。例えば、4時間や5時間、または6時間ちょうどの勤務時間であれば、企業は法的には休憩時間を設定する必要はありません。
ただし、勤務時間が6時間を1分でも超えると休憩時間が必要となるため、企業はその点に注意して勤務時間を管理しましょう。また、従業員のリフレッシュと業務効率の向上を図るために、短時間の休憩を提供する企業も多くあります。
勤務時間が6時間を超えて8時間以内の場合、労働基準法第34条に基づき、少なくとも45分の休憩時間を与える必要があります。例えば、勤務時間が7時間や8時間の日は、45分の休憩時間を取得することで法令違反にはなりません。
しかし、9:00~18:00の勤務など定時が8時間の企業では、休憩時間を12:00~13:00のように1時間設定しているケースも多いです。これは、1分でも残業が発生した場合、1時間の休憩時間が必要になるためです。なお、定時で45分の休憩を設定している企業では、残業が必要な日は残業開始前に15分の追加休憩時間を必ず取るなど、適切なルール作りが必須です。
勤務時間が8時間を超える場合、労働基準法第34条に基づき、少なくとも1時間の休憩時間を与える必要があります。意外に思われるかもしれませんが、法的に定められている休憩時間の最大は1時間です。9時間や12時間、あるいは16時間の勤務でも、1時間の休憩さえ確保されていれば、労働基準法としては適法です。
しかし、企業は労働安全衛生法に基づき、従業員の健康を守るための安全配慮義務も持っています。長時間労働に対しては特に注意が必要であり、過労を避けるためにも、勤務時間に対する適切な休憩時間の設定が重要です。
勤務時間と休憩時間の管理には、押さえておくべき注意点があります。ここでは残業時間や夜勤、雇用形態などに関するルールと、例外事項について解説します。
勤務時間の管理においては、残業時間も休憩時間の計算に含める必要があります。前述の通り、勤務時間が6時間を超えて8時間以内の場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩時間が必要です。
例えば、シフトの勤務時間が8時間で、2時間の残業を行った場合、合計勤務時間は10時間となります。このケースでは、シフト内の休憩時間は45分で足りますが、残業時間を含めて勤務時間を計算すると8時間を超えるため、合計で1時間の休憩時間が必要となります。従業員の疲労を防ぐため、企業はこの点に注意して、適切な休憩時間を確保しなければなりません。
夜勤の場合も、勤務時間と休憩時間のルールは日勤と同様に適用されます。つまり、夜勤シフトが6時間の場合は休憩時間無し、8時間の場合は45分の休憩時間、9時間の場合は1時間の休憩時間を与えれば、労働基準法に問題はありません。
しかし、夜勤は身体に負担がかかりやすく、日勤の従業員とは異なる疲労やストレスを抱えることが多いため、企業には特に配慮が求められます。交代で仮眠を取れるように2時間以上の休憩時間を確保するなど、従業員の健康を守り、夜勤業務の効率を上げるためにも、法令以上の休憩時間を確保することを検討してみると良いでしょう。
勤務時間と休憩時間のルールは、正社員や契約社員、アルバイト・パートなどの雇用形態に関係なく同一です。労働基準法はすべての労働者に対して適用されるため、企業は雇用する全従業員について、同じ基準で勤務時間と休憩時間を管理しなければなりません。
例えば、シフト制を採用している企業では、雇用形態に関わらずシフトパターンに基づいて休憩時間を設定しておくと、一貫した基準を適用できます。これにより、従業員間の不公平を防ぎ、全体の労働環境の改善にもつながるでしょう。
休憩時間中に業務が発生し、労働が必要になった場合、その時間は勤務時間として扱われます。例えば、重大なクレームにより緊急対応が必要となった場合、休憩時間を中断して働いた時間は勤務時間としてカウントされ、適切な賃金を支払う必要があります。
こうしたケースでは、従業員には緊急対応が終わり次第、改めて休憩時間を与える必要があります。休憩時間を分割して与えることは法的に問題ありません。緊急対応終了後に、残りの休憩時間を従業員に取得してもらえればコンプライアンス違反とはならないため、もしもの場合はそのように対応すると良いでしょう。
労働基準法第34条には、前述した通り、休憩時間の「途中付与」「一斉付与」「自由利用」の3原則が定められています。このうち、「一斉付与」「自由利用」については例外があります。
業務の性質上、一斉に休憩を取ることが難しい以下の業種では、休憩時間を一斉に付与しなくても良いとされています。
また、その他の業種でも、企業と従業員で労使協定を締結した場合には、一斉付与の原則に例外が認められます。
以下については、業務の特性上、休憩時間の自由利用の原則を適用せず、利用の仕方を制限できます。
勤務時間と休憩時間のルールに違反した場合、労働基準法第119条に基づき、企業には罰則が科せられます。罰則にはいくつか種類がありますが、勤務時間(労働基準法第32条)と休憩時間(同法第34条)に関する違反の罰則は、いずれも6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
また、36協定で定める時間外労働の上限(月45時間・年360時間)を超過した場合も、同様に6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。以前は行政指導の対象ではあるものの罰則がなく、実質無制限に残業ができる状態でしたが、働き方改革関連法案に伴い、2019年4月より罰則付きの上限導入となりました。これは、健全な労働環境を維持するために、時間外労働や休日労働を必要最小限にとどめるようにという政府のメッセージといえるでしょう。
ここまで、勤務時間と休憩時間の法令における基本ルールをお伝えしてきました。では、基本に沿った休憩時間の確保が難しい場合はどのように対応すればよいでしょうか。以下に具体的な対処法を解説します。
一斉での休憩時間の確保が難しい場合、従業員によって時間帯を変更することが有効です。先に説明した通り、労使協定を結ぶことで一斉付与の例外が認められます。
例えば、シフト制を導入している企業では、忙しい時間帯を避けて個々に休憩を取るように調整する方法が考えられます。業務の種類に合わせた柔軟なシフト調整を実施することで、従業員は業務のピーク時間を避けて休憩でき、適切な休憩時間の確保につながるでしょう。
休憩時間を分割して取得させることは、法令で制限されていないため認められています。ただし、分割する休憩時間があまりにも短い場合、従業員が「労働から完全に解放された」とは判断されず、実質的には勤務時間とみなされるリスクがあるため、その点を注意して運用しましょう。
例えば、1時間の休憩を30分ずつ2回に分けたり、15分ずつ4回に分けたりすることは問題ありませんが、5分ずつ12回に分けるという方法では、昼食などの時間が十分に確保できているとは言えないため、適切ではありません。従業員が心身をしっかりリフレッシュできる休憩時間を過ごせるよう、分割休憩は現実的かつ効果的な形で行う必要があるでしょう。
どうしても休憩時間が確保できない場合には、勤務時間に応じた適正な賃金を支払う必要があります。例えば、休憩中にクレーム対応が発生して残りの休憩時間を取れなかった場合や、急な欠勤などで人手不足で休憩時間を確保できなかった場合、その時間は当然に勤務時間とみなされます。
しかし、賃金を支払ったとしても、休憩時間を与えなかったこと自体が労働基準法に違反する事実は変わらず、法的責任は免れません。休憩時間の取得は従業員の権利であり、企業の義務です。企業には、従業員が適切に休憩を取れる環境を整えることが第一に求められます。賃金の支払いは、万が一休憩が取れなかった際のやむを得ない対応と心得ておきましょう。
勤務時間と休憩時間を適切に把握し、管理するためには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。JOEの勤怠管理システムは、数十人から数万人まで多様な業種に対応した、柔軟で多機能なシステムです。
シンプルな操作で出退勤の打刻や申請ができ、月次はもちろん、月中でもリアルタイムに勤務時間と休憩時間を集計できます。また、申請漏れや打刻乖離、残業時間超過などに対するアラート機能も充実しています。JOEの勤怠管理システムを活用することで、従業員一人ひとりの正確な勤務実態の把握に役立つでしょう。
勤務時間と休憩時間の適正な把握は、従業員の健康と業務の生産性を維持するために不可欠です。法令を遵守し、適切に管理することで、健全で働きやすい職場づくりを実現できるでしょう。
JOEの勤怠管理システムを導入することで、勤務時間と休憩時間の正確な把握と管理が可能となり、労務管理の精度と効率が向上します。導入後のアフターサポートも安心で、専門知識を持つスタッフが法改正や就業規則の変更にも柔軟に対応します。
企業の働き方改革を強力にサポートする、JOEの勤怠管理システムの導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。詳細は「勤怠管理システム」のページをご確認ください。