2024.09.03
日給月給制とは、1日を基準にして月の給与額が決められている給与形態の1つです。日給制や月給制、月給日給制などさまざまな給与制度が存在する中で、それぞれの違いや強みを理解しておくことは重要です。
この記事では、日給月給制の定義や計算方法、メリット・デメリット、導入時の注意点など、網羅的に解説します。給与制度の選択は従業員のモチベーションや企業の運営に大きく影響します。日給月給制について深く理解し、自社に最適な給与制度を見つけるための参考にしてください。
日給月給制とは、1日を給与の計算単位として月額給与を支給する制度です。日給月給制の主な特徴としては、以下のものが挙げられます。
しかし、日給月給制は法令で明確に定義されているわけではなく、具体的な内容や計算方法は企業ごとの就業規則や雇用契約に基づいて決定されます。そのため、日給月給制を導入する場合は、事前にしっかりと取り決めを行うことが重要です。
次に、他の給与制度との違いについて詳しく見ていきましょう。
月給制は、毎月固定の給与が支給される制度です。欠勤や遅刻・早退があっても、月の給与額には変動がありません。一方、日給月給制は、欠勤や遅刻・早退があると、その分の給与が差し引かれるため、支給額が変動します。
月給制では、従業員は収入の安定感を得られますが、欠勤が多い従業員に対する給与面でのペナルティがないため、企業側には管理の難しさが残ります。そのため、労働基準法第41条において労働時間や休憩、休日の制限を受けないと定められている「管理監督者」のみに月給制を採用する企業が多いです。
なお、月給制は企業によって「完全月給制」と呼ばれることもありますが、内容は同じです。
日給制は、1日単位で給与が支給される制度です。働いた日数分だけ給与が支給され、それ以外の日は給与が支払われません。「1日の給与額×勤務日数」で給与が計算される非常にシンプルな方法です。
日給月給制も1日の給与額が決まっている点では同じですが、日給月給制では月額給与が固定されており、欠勤や遅刻・早退がない限りは給与が変わりません。一方、日給制では勤務日数に応じて給与が決まるため、働く日数によって月の支給額が大きく変動します。
日給制は、短期間の雇用である日雇労働者や季節労働者などでよく採用される給与形態です。
月給日給制は、毎月固定の給与が支給されますが、欠勤や遅刻・早退があった場合にその分を控除して給与が決まる給与制度です。
日給月給制と月給日給制は、どちらも欠勤や遅刻・早退がある場合に給与が減額される点で共通していますが、月給日給制では職務手当や役職手当などの手当については日割控除せず、基本給のみが控除対象となる点が異なります。
ただし、前述の通り、どちらも法的な定義はないため、ある企業の日給月給制と別の企業の月給日給制が同じ意味で扱われているケースもあります。具体的な制度の詳細は、企業ごとにしっかりと確認し、取り決めするのが良いでしょう。
日給月給制を導入する場合、実際の給与計算はどのように行えば良いのでしょうか。ここでは、日給月給制の給与の計算方法について、順を追って詳しく解説していきます。具体的なステップを理解しましょう。
日給月給制では、まず基本となる月額給与を計算します。以下の計算式を用います。
「月額給与=1日の給与額✕所定労働日数」
例えば、1日あたりの給与が1万円で、所定労働日数が20日であれば、月額給与は20万円となります。
所定労働日数は、毎月の営業日数に応じて月ごとに月額給与を変える方法と、1年間の所定労働日数合計から平均して1ヶ月の所定労働日数を設定し、月額給与が年間を通じて変わらないようにする方法があります。
前者の場合、実際の営業日数に基づいて正確な給与が支払われます。後者の場合、給与が安定するため、従業員にとって収入の予測が立てやすくなります。どちらの方法を採用するかは、企業ごとの就業規則で決められるため、自社のニーズに合わせて適切な方法を選択しましょう。
次に、欠勤・遅刻・早退による控除額を計算します。計算方法は、企業ごとに就業規則で定められますが、一般的な計算方法を紹介します。
日給月給制の場合、1日の給与額が決まっているため、欠勤の場合はそれを用いて計算します。計算式は以下の通りです。
「欠勤控除額=1日の給与額✕欠勤日数」
例えば、1日あたりの給与が1万円で、欠勤日数が3日であれば、1万円✕3日で3万円が欠勤控除額となります。
遅刻・早退控除では、時間単価を計算し、遅刻や早退した時間分を控除します。計算式は以下の通りです。
「時間単価=1日の給与額÷1日の所定労働時間数」
「遅刻・早退控除額=時間単価✕遅刻・早退時間数」
例えば、1日あたりの給与が1万円で所定労働時間数が1日8時間の従業員がその月に合計2時間遅刻した場合、時間単価は1万円÷8時間で1,250円となり、遅刻早退控除額は1,250円✕2時間で2,500円と求められます。
厚生労働省の「モデル就業規則」にも規程例が載っているので、参考にしてみると良いでしょう。
最後に、具体的な条件をもとに、計算例を見ていきましょう。
1日の給与額:12,000円
1日の所定労働時間:8時間
所定労働日数:21日
欠勤日数:2日
遅刻・早退時間数:5時間
月額給与=12,000円✕21日=252,000円
欠勤控除額=12,000円✕2日=24,000円
時間単価=12,000円÷8時間=1,500円
遅刻・早退控除額=1,500円✕5時間=7,500円
→総支給額=月額給与-欠勤控除額-遅刻・早退控除額
=252,000円-24,000円-7,500円
=220,500円
日給月給制の導入を検討する際には、適切な運用を確立するために、制度の理解を深める重要なポイントを押さえることが必要です。ここでは、知っておきたい日給月給制のポイントについて解説します。
日給月給制は、法律では明確に定義されていない給与形態です。そのため、各企業が設定する就業規則が重要となります。企業ごとに定めるルールに基づいて、給与計算や欠勤・遅刻・早退の取り扱いが決定されます。
具体的には、欠勤や遅刻・早退があった場合の減額方法や、所定労働日数・所定労働時間数の定義などを就業規則に規定しておく必要があります。就業規則本則とは別に、給与規程を設けても構いません。適切な制度運用を行うためにも、企業は自社のルールを明確にし、従業員に対しても十分な説明を行うことが求められるでしょう。
日給月給制でも有給休暇は取得可能です。年次有給休暇は、労働基準法第39条に基づき付与されるもので、雇用期間が6ヶ月以上であり、全労働日の8割以上勤務しているすべての従業員に対して付与されます。
年次有給休暇を取得した場合の給与は、就業規則の定めによって、平均賃金や通常の賃金、もしくは健康保険法上の標準報酬日額相当額のいずれかが支払われます。企業ごとの就業規則により異なりますが、日給月給制の場合は1日の給与額が決まっているため、1日勤務した場合の「通常の賃金」で支払われる企業が多いでしょう。
日給月給制の場合も、法定労働時間を超える残業や法定休日・深夜に勤務した場合、労働基準法第37条に基づく割増賃金が適用されます。具体的には以下の通りです。
日給月給制でも、適正な残業手当を支給し、未払残業を防ぐことで、コンプライアンスを遵守しましょう。
日給月給制でも、他の給与形態と同様に社会保険料、住民税、所得税が発生します。具体的には以下の通りです。
これらの項目は、給与計算時に「控除項目」として総支給額から差し引かれ、手取り額が算出されます。日給月給制では、月額給与から欠勤や遅刻・早退の減額が行われますが、減額後の給与に対して上記の控除が適用されるということです。
日給月給制の導入には、企業と従業員それぞれにメリットとデメリットがあります。ここでは、双方の視点からこの給与制度の特性を詳しく解説します。
日給月給制の企業側のメリットは、人件費の見通しが立てやすい点にあります。欠勤や遅刻・早退がない限り月額給与が固定されるため、人件費の予測が容易です。さらに、欠勤や遅刻・早退があった場合にはその分を減額できるため、無駄な人件費を抑えられます。また、欠勤が多い従業員と休まず出勤する従業員の間で給与の差が明確になることで、公平性も確保されるでしょう。
一方で、年次有給休暇がまだ付与されていない従業員や使い切ってしまった従業員の場合、やむを得ない事情による欠勤でも給与が減額されるため、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。このため、事前にしっかりと制度の説明を行い、従業員の納得を得ることが重要です。
日給月給制の従業員側のメリットは、欠勤や遅刻・早退がなければ毎月安定した収入が得られる点です。また、年次有給休暇を利用することで、欠勤による給与減額を避けられます。さらに、勤務日数に応じた給与支払いは公平感があり、働く意欲を維持しやすいです。
一方で、欠勤や遅刻・早退があるとその分の給与が減額され、収入が不安定になるリスクがあります。特に、家庭の事情や病気などで休みが多い場合、年次有給休暇を使い切った後は月収が大幅に減少する可能性があります。企業は、柔軟な働き方の提案や健康保険の傷病手当金制度の案内など、従業員が安心して休める仕組みづくりを検討することが重要です。
日給月給制を導入する際には、企業側が注意すべきポイントがあります。ここでは、気をつけたい注意点について解説します。適切に対応することで、従業員とのトラブルを避け、円滑な制度運用が可能になるでしょう。
日給月給制は控除が発生する給与形態であるため、採用時にしっかりと説明を行うことが重要です。特に、欠勤や遅刻・早退が給与にどのように影響するかを具体的に説明し、従業員に十分な理解を求めましょう。
具体的なケースやシミュレーションを交えて説明するなど、従業員が分かりやすいよう工夫すると効果的です。これにより、認識の相違による入社後のトラブルを防ぐと共に、従業員の納得感を高め、業務に集中してもらうことが期待できます。
日給月給制では欠勤や遅刻・早退の控除が適用されるため、従業員の勤怠情報を正確に把握することが非常に重要です。客観的な打刻時刻を記録できる勤怠管理システムを導入し、従業員の勤務状況をリアルタイムで把握できる体制を整えましょう。
出勤・退勤時刻を適正に把握することで、正確な給与計算が可能となり、透明性のある運用が実現できます。勤怠管理システムの導入は、従業員との信頼関係を築きながら、効果的な労務管理を実現するための第一歩です。
日給月給制を導入する際には、正確な勤怠状況の把握と柔軟な給与計算業務が不可欠です。これを実現できるのがJOEのサービスです。ここでは、JOEの勤怠管理システムと給与計算システムについて紹介します。
JOEの勤怠管理システムは、数十人から数万人規模まで、多様な業種・業態に対応可能な、柔軟で多機能なクラウドシステムです。簡単な操作で出勤・退勤打刻や申請ができ、月次はもちろん、月途中でもリアルタイムに勤務時間を集計できます。
また、打刻漏れなどの不備があればシステムよりアラートが通知されるため、管理部門の負担を大幅に軽減します。設定やメンテナンスもJOEが担当するので、初めて日給月給制を導入する際も、設定ミスなくシステム運用がスムーズに進みます。ぜひ、JOEの勤怠管理システムを活用して、従業員の正確な勤怠状況の把握を実現しましょう。
JOEの給与計算システムは、企業ごとの給与規程に柔軟に対応できるシステムです。複雑な計算ロジックにも対応可能で、給与計算の合理化や効率化に役立ちます。日給月給制は企業ごとにルールが異なるため、柔軟に計算式を設定できるJOEのシステムは非常に有用です。
さらに、法改正や規程の変更にも迅速に対応できるため、常に最新の法制度に準拠した給与計算が行えます。システム導入後のメンテナンスもJOEが担当し、安心して利用できる環境を提供します。給与計算を“見える化”するJOEの給与計算システムの導入をぜひご検討ください。
この記事では、日給月給制の定義や計算方法、導入のポイントについて解説しました。導入を検討する際には、日給月給制の特徴とメリット・デメリットを理解し、適切に運用することが重要です。
JOEの給与計算システムは、企業ごとの給与規程に柔軟に対応できるカスタマイズ性と充実したサポート体制を提供しています。また、勤怠管理システムを併用することで、正確な勤怠情報の把握が可能になります。日給月給制を効果的に導入し、従業員の信頼を得るために、JOEのサービスをぜひご活用ください。
詳細は「給与計算システム(Web明細含む)」「勤怠管理システム」のページからご確認いただけます。