2025.04.09
子育て中の残業免除は、育児・介護休業法において「育児を行う労働者の所定外労働の制限」として定められている制度です。この記事では、子育て中の残業免除について、対象者の要件や適用外となる労働者、事業主が請求を拒否できるケース、免除となる残業時間などについて解説します。2025年の改正についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
子育て中の労働者において、残業免除となる対象者について解説します。また、育児・介護休業法の改正によって、2025年4月1日から対象者の範囲が拡大することについても解説します。
育児・介護休業法の第16条の8第1項には、「育児を行う労働者の所定外労働の制限」として、「事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけません」と定められています。
このルールは、産休や育休の取得の有無や性別を問わず対象となります。ただし、日雇い労働者や労働基準法41条の該当者は対象外です。
子育て中の残業免除の対象者はこれまで「3歳に満たない子を養育する労働者」とされていましたが、育児・介護休業法の改正によって、2025年4月1日からは「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」に拡大されます。
今回の改正は、男女ともに仕事と育児を両立できるようにするために、子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現することを目的としています。
子育て中の残業免除ルールの対象となるのは2025年4月1日から「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」となりますが、「日雇い労働者」と「労働基準法41条該当者」については適用外となります。
労働基準法の41条には、労働規定の適用外となる労働者の要件が定められています。労働基準法41条の内容は、以下の通りです。
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
つまり、林業を除く農林水産業に従事する労働者、管理監督者、行政官庁から許可を受けた監視業務等に従事する労働者については、「労働基準法41条該当者」となります。そのため、子育て中の残業免除ルールにおいても適用外となります。
子育て中の残業免除の対象となる場合の従業員からの請求であっても、「事業の正常な運営を妨げる場合」と「労使協定の締結により免除対象外を定めた場合」においては、事業者側が残業免除を拒否できます。それぞれのケースについて解説します。
「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかの判断について、以下のように定義しています。
「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その労働者の所属する事業所を基準として、その労働者の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易度等諸般の事情を考慮して客観的に判断することとなります。
基本的には当該労働者が請求どおりに所定外労働の制限を受けられるように、事業主は通常考えられる相当の努力をすべきであるとされています。つまり、作業の内容や忙しさ、代替要員の配置などの事情を考慮しながらも、単に所定外労働が事業の運営上必要であるという理由だけでは請求を拒むことはできないということです。
厚生労働省令によると、「その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない」「1週間の所定労働日数が2日以下」のような労働者について、所定外労働の制限を請求できないとする労使協定がある場合には、子育て中の残業免除の対象外とすることが可能としています。
つまり、入社して間もない労働者や労働日数が週2日以下の従業員は、労使協定の締結によって対象から除外することが認められているということです。
労使協定とは、労働者と使用者の間で労働環境に関する取り決めを結ぶ書面契約です。使用者と労働者の過半数を代表する者との間で締結するもので、育児・介護休業法の原則から外れた労働条件を定める場合に締結が義務付けられています。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし Ⅵ 所定外労働の制限」
子育て中の残業免除において、免除となる残業時間の定義や混同しやすい別の制度についてそれぞれ解説します。
育児・介護休業法において、免除となる残業は「所定労働時間」を超えるものであることとされています。所定労働時間とは、企業が就業規則や雇用契約書などで定める労働時間のことで、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた時間のことを指します。混同しやすい「法定労働時間」とは異なるため、注意が必要です。
法定労働時間とは、労働基準法第32条に定められた労働時間の上限のことです。労働基準法では、労働時間について「1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」と定められています。
つまり、所定労働時間は企業が自由に決められる労働時間、法定労働時間は労働基準法によって定められた労働時間の上限という違いがあります。育児・介護休業法において免除となる残業は、所定労働時間を超えるものであると理解しておきましょう。
「育児を行う労働者の所定外労働の制限」と混同しやすい制度として、育児・介護休業法第17条第1項「育児を行う労働者の時間外労働の制限」があります。
具体的には、育児・介護休業法において「事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、その子を養育するために請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせてはいけません」と定められています。
つまり、小学校就学前の子をもつ従業員において、請求があった場合は上記の制限を超える時間外労働をさせてはならないということです。ただし、「育児を行う労働者の所定外労働の制限」と違う点は、制限対象となる残業が「法定労働時間を超えるもの」であることです。
「育児を行う労働者の所定外労働の制限」は「所定労働時間」を超える残業が免除になるのに対し、「育児を行う労働者の時間外労働の制限」は「法定労働時間」を超える残業に制限があるという点が大きな違いになります。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし Ⅶ 時間外労働の制限」
子育て中の残業免除は、労働者から申し出があった場合に適用されるため、制限開始の1ヵ月前までに「1ヵ月から1年以内の期間」を指定して事業主へ申し出る必要があります。その際、開始日と終了日も明記しなければなりません。
この請求は何回でもすることが可能であるため、期間を決めて申請しても、子どもが就学する前の期間であれば再度申請することが可能です。
2025年の法改正は、男女ともに仕事と育児を両立できるよう、柔軟な働き方を実現することを目指したものです。これにより、育児中の労働者はより長期間、残業免除を利用できるようになります。企業は制度変更に合わせた対応を進めることで、労働環境の向上と働きやすい職場づくりを目指すことが求められます。
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