2025.04.09
企業の労務管理において、残業時の休憩時間の取り扱いは重要な課題の1つです。労働基準法では、労働時間に応じた休憩時間の付与が義務付けられていますが、残業が発生した場合に追加の休憩時間が必要なのか、またどのように計算すれば良いのか悩むことも少なくないでしょう。適切な休憩時間の管理は、コンプライアンスの遵守はもちろん、従業員の健康維持やワークライフバランスの確保、生産性の向上にも直結する重要な要素です。この記事では、残業時の休憩時間に関する基準や計算方法について、人事担当者向けに詳しく解説します。
「残業」という言葉は日常生活でもよく耳にしますが、その定義やルールを正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。ここでは、残業の定義や種類、上限時間などの基本ルールについて、詳しく解説します。
「残業」は法律上の正式な用語ではありませんが、法定労働時間を超えた労働を指します。労働基準法では、「1日8時間、1週40時間」を超える勤務は、割増賃金の対象となる時間外労働とされています。しかし、これに満たない場合であっても、企業の定時や所定労働時間を超えた労働を「残業」と呼ぶことが一般的です。
そのため、残業の概念は法律上の定義と実務上の運用では異なるケースもあります。また、休日労働や深夜労働も、広義では残業に含まれると考えられます。
残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があります。
「法定内残業」とは、所定労働時間を超えて働く時間のうち、法定労働時間(1日8時間、週40時間)までの残業を指します。例えば、所定労働時間が7時間の企業で、1日8時間まで働いた場合の1時間が法定内残業となります。
一方、「法定外残業」は前述した法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える残業時間を指し、25%以上の割増賃金の支払いが必要となります。なお、1か月60時間を超える残業時間については、50%以上の割増賃金が必要です。
企業が従業員に残業をさせる場合、労働基準法第36条に基づく「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。この協定がない場合、企業は法定労働時間を超える残業を命じることができません。
また、36協定を締結したとしても、法定労働時間を超える残業には上限があり、原則として以下の時間を超えることはできません。
これらのルールを遵守しない場合、企業には罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性があります。また、過重労働につながる可能性も高いため、企業にとって大きなリスクとなります。
労働基準法では、従業員の心身の疲労を回復させ、健康を維持するために、一定の労働時間ごとに休憩時間を付与することが義務付けられています。ここでは、休憩時間の基本ルールについて詳しく解説します。
労働基準法第34条では、労働時間に応じた休憩時間について、以下のように定められています。
このように、労働基準法では休憩時間の最低基準が設けられています。上記の基準を満たしていれば法令違反にはなりませんが、休憩時間は従業員の疲労蓄積を防ぎ、業務の効率を維持するために重要な役割を果たします。業務の性質や労働の負担度合いによっては、法定基準以上の休憩時間を設けることが望ましいでしょう。
労働基準法第34条では、休憩時間の付与に関する3つの原則が定められています。
適切な休憩時間の管理を行うためには、これら3つの原則を正しく理解し、運用することが重要です。
休憩時間を計算する際には、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、労働時間と休憩時間の関係や、計算時に留意すべき点について解説します。
労働基準法第34条で定められている通り、休憩時間は従業員が自由に使える時間であり、労働時間には含まれません。そのため、給与計算の際にも、休憩時間は除外して計算します。
昼休憩などの時間帯は、従業員が仕事の指示を受けず、業務から完全に解放されていることが前提となります。万が一、業務の指示を受ける時間が含まれてしまうと、実質的には休憩とは認められず、労働時間と見なされる場合があります。企業は、休憩時間を労働時間と明確に区別し、適正に管理することが重要です。
一方、残業時間は労働時間に含まれます。労働基準法第32条では、法定労働時間を「1日8時間、1週40時間」と定めており、これを超えて労働した時間は時間外労働とみなされ、25%以上の割増賃金の支払いが義務付けられています。
付与すべき休憩時間の計算についても、残業時間を含めた総労働時間に基づいて判断する必要があります。例えば、1日9時間労働した場合、8時間を超えた1時間が時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要になります。休憩時間については、労働時間が8時間を超えているため、60分以上の休憩を途中で取得していれば問題ありません。
休憩時間は分割して付与することも可能ですが、以下のようなケースは原則に反します。
残業が発生した場合、休憩時間を追加しなければならないケースと、そうでないケースがあります。ここでは、具体例を示しながら、それぞれのケースについて解説します。
以下のようなケースでは、法令に基づき休憩時間を追加する必要があります。
法的には上記の通りですが、深夜労働(22時~翌5時)を含む長時間の残業が発生する場合は、従業員の健康確保の観点から、追加の休憩時間を設けることが推奨されます。
以下のようなケースでは、追加の休憩時間を設ける必要はありません。
上記はあくまで法令上の最低基準ですが、休憩時間は従業員の健康維持や業務効率の向上にも影響を与えるため、状況に応じて適切に設定することが重要です。
残業の有無にかかわらず、休憩時間はその日の総労働時間を基準に計算されます。ここでは、具体的な計算方法について解説します。
総労働時間が6時間以下の場合は休憩時間を付与する義務はありません。そのため、5時間の労働であれば休憩を取る必要はありません。
ただし、業務の性質や従業員の健康管理の観点から、任意で休憩時間を設けることは可能です。この場合、休憩時間の長さや回数は企業の判断で決定できます。例えば、集中力を維持するために10分~15分程度の短い休憩を設けるケースもあります。
総労働時間が6時間ちょうどまでの場合、法律上は休憩時間を付与する義務はありません。しかし、6時間を1分でも超えた場合は、45分の休憩を取らせる必要があります。
例えば、所定労働時間6時間の従業員が残業をする場合、先に45分の休憩を取得してからでなければ残業をさせることはできません。そのため、実務上の運用の煩雑さを避けるために、6時間勤務の従業員にも定時内で45分以上の休憩を取得させるケースが多く見られます。
総労働時間が8時間ちょうどの場合、45分の休憩が必須です。さらに、残業によって総労働時間が8時間1分以上になると、合計60分の休憩を確保する必要があります。
例えば、所定労働時間が8時間(休憩45分)の従業員が残業をする場合、追加で15分の休憩を取得しなければ残業をさせることはできません。以下のように、残業時の休憩取得をルールとして定めている企業も多く見られます。
定時勤務:9:00~17:45(休憩12:00~12:45)
追加休憩:17:45~18:00(※残業をする場合のみ取得)
残業開始:18:00~
また、運用の煩雑さを避けるため、8時間勤務の従業員にも定時内で60分以上の休憩を取得させているケースも多くあります。
一方で、8時間を超えた後の残業時間が何時間であっても、法的に60分以上の休憩を取らせる義務はありません。ただし、長時間の残業が発生する場合は、従業員の健康維持や業務効率の向上の観点から、適切な休憩を取らせることが推奨されます。
この記事では、残業時の休憩時間に関する法的ルールや具体的な計算方法について解説しました。労働基準法では、労働時間に応じた休憩時間の付与が義務付けられています。法令遵守はもちろん、従業員の健康管理や業務効率化の観点からも、適切な休憩時間を設定することが重要です。
しかし、休憩時間の管理を手作業で行うのは煩雑で、ミスが発生する可能性もあります。JOEの勤怠管理システムを導入すれば、労働時間や休憩時間の計算を自動化し、適正な勤怠管理を実現できるでしょう。
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